第14章 京
陽が傾いても往来に人は多い。宿に向かうまでの道が狭くなってきて誰かにぶつかった。
ドンッ
ぶつかった拍子で相手の荷物が落ちてしまい、誤りながら拾う。
「すみません。お怪我はありませんか?」
「いや、大丈夫だ」
相手の顔見ると確かに痛がっている様子もなく安心する。
萌黄色の瞳が特徴的だ。目の下のクマは寝不足なのか、
「‥‥ポップコーン‥‥」
「「え?」」
今、この人なんて言った?ポップコーン?
「その反応、間違いなさそうだ」
小声で何かを言っていたがこれ以上この人と関わってはいけないと本能で感知し、失礼しますと言って足早にその場から逃げた。
「ねえ、美桜。さっきの人、ポップコーンって言ったよね、?」
宿に着き、戸締まりを確認してさっきの人について話す。
「言ったわ。何故この時代の人がポップコーンを知っているの?」
疑問だらけだ。ここでとやかく言っても仕方がないが頭の中で警鐘が鳴る。
京にいる間はあの男を見かけたら逃げるようにしようと決めた。
同時刻、京のとある路地裏に二人の男がいた。
一人は先程美桜とぶつかった男、もう一人は血を連想させるような真紅の瞳をもつ褐色肌の男。
「下見はどうだった」
「上々だ。確認したい事もできた」
「お前の確認したいという我儘に付き合ってやったんだ。ド派手な祭りにさせろ」
「勿論だ。お前には暴れてもらう」
「ククッ、楽しみだなあ。早くやりたくてたまんねーぜ」
「辛抱の効かないやつだ。時は満ちた。戻って支度をするぞ」
夜の闇に消えた二人の会話は月のみぞ知る事となった。