第19章 文書
「殆どこれから死にに行くと言っているようなものだな」
光秀は荒ぶる感情を落ち着かせるため、拳を強く握る。
「料理教えてやるから早く戻って来いよ‥‥」
「美桜は絶対に死にに行くような人じゃないです!自分の信条に合った生き方をしています。『死にに行く』のは美桜の信条にそぐわない」
「『死にに行く』のではなく『大事な仲間、困っている人を助ける』という見方の方が正しいかも知れないな」
「美桜もわかっているはずだ。例え帰蝶達の思惑を止めれたとしても無事じゃ済まないことくらい‥‥」
光秀、慶次の言っている事は当てはまる。
それを聞いて秀吉はやるせない思いを拳に込めて畳を殴る。
「‥‥堺に向かう」
信長の一言で全員が顔を上げる。
「帰蝶達の兵力を少しでも削ぐ。黒幕の正体も掴めるかもしれん。そして、あわよくば美桜を連れ帰る。良いな」
「「はっ」」
美桜一人がそんな大きなものを背負わなくて良い‥‥
光秀は心の中で静かにそう思った。
信長、秀吉、光秀、慶次、は船での奇襲を仕掛けようという算段だ。
政宗、家康、三成は残って反乱軍に備える。
最初こそは織田軍が優勢だったが、堺の街ごとを人質にされたせいで砲撃がしづらくなった。
なんとか帰蝶軍に兵力は何とか削げたものの、撤退せざるを得ない状況になってしまった。
「美桜は恐らく商館に軟禁状態でしょう」
「下手に商館を攻めても美桜が危険なだけだ‥‥」
広間で武装したまま軍議を開いて美桜の元へどう向かおうか考えていると突然天井がカコンと外れて、見知った姿が降りて来た。