第14章 京
それから滞在中はあの男を一切見かけずに平穏に過ごす事ができた。
「今日で帰っちゃうなんて寂しいわ」
「私も寂しいけど、帰ってやる事やらなくちゃ」
琴葉はそう言いつつも名残惜しそうにしている。
「滞在期間延ばして、家康さんの機嫌が悪くなるのとどっちが良い?」
「はい、帰ります‥‥」
「これ、旅のお土産です」
お豪ちゃんから西陣織を頂く。
「西陣織?!良いの?!こんな高価なものを頂いて‥」
「はい、とても楽しい時間をありがとうございました。せめてものお礼です。受け取って下さい」
「「ありがとう」!」
「また会いましょう。それまでお互い元気でいなくちゃね!」
「そうね、落ち着いたら文を書くわ」
私達は手を振り、街から少し離れたところに止めてある馬に乗って安土城へ帰った。
この平穏が嵐の前の静けさだとは微細も思わなかった。