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あなたに出逢う

第2章 本能寺



笑みを浮かべた男がこちらに近寄って来る。

「誰ですか?」

「私は顕如と申す旅の僧だ。困ったことがあるなら相談に乗ろう」

「いえ、お気持ちだけで十分です」

「(この人、本能寺で信長様を襲った人に似てる気がする‥)」

警戒心を強めた瞬間、男が大股で私達の方へ踏み込み、肩に手を乗せた。

「早く家へ帰るといい。夜の森は鬼がうろついているからな」

「‥‥ご親切にどうも」

直感で危険だと思い、私達はまた走り出した。


走り去った二人を見ていた顕如の元に、一人の青年が舞い降りた。

「顕如様!ご無事でしたか!それで‥討てましたか?」

「いや、あの女子達のおかげで討ち損じたが、お前が奴の元にいる限り、必ず機はある」

「でも‥‥俺っ‥!」

「忘れたか蘭丸、我らの悲願を」

「‥‥‥っ、いいえ、顕如様」

「案ずるな。‥顔を上げろ。久方ぶりに、私に笑顔を見せておくれ」

「‥わかりました。戻って、使命を果たします。あなたが、そう望むのなら」








どこまでも森は続いていて、私達はただひたすらに走り
った。
「(どうしてこんな変な男に絡まれるの、道は暗いし、整備されてないし‥夢であって‥!)」


「おい!」

「(え?)」

琴葉の手を繋いでいるもう片方の手首を誰かに掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。

「もう、今度は何ですか。誰ですか」

少し初対面の人にキツく当たり過ぎたか、いや、この人も変な人かもしれない‥

「何って、目の前が崖だったから引っ張ったんだよ。あー‥焦った‥」

「(助けてくれたってことか)」

「ありがとうございます。危うく死ぬところでした」

ふと冷静になって手首を掴まれている事に気づいた。
男の方も今気づいたようで赤面し出し、ぶっきらぼうに手を離した。

「礼なんていらねーよ」

「(不器用な人‥)」






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