第14章 京
「千姫様、お客様です。通してもよろしいでしょうか」
「通しなさい」
襖を開けると千が座って書物読んでいた。
誰が入って来たのか見るために顔を上げた途端、華が咲き誇るような笑みを浮かべた。
「美桜!いらっしゃい!そちらの方はもしかして琴葉?」
琴葉の姿を確認した瞬間、琴葉に抱きついていた。
「会いたかったわ!さあ、こっちに座って!」
琴葉は目が白黒しつつも案内された所に座る。
屋敷の人がお茶を用意してくれ話が始まる。
「改めて、久しぶりね美桜。そして初めまして琴葉。私は千、気軽に千って呼んで」
「初めまして、お千、ちゃん、」
「ちゃんが気になるけど仕方ないわね。慣れたら呼び捨てにしてね」
琴葉は思っていたお姫様と違うかったのかまだ驚いている。
確かに千はみんなの想像するお姫様とは少し違う。明るくて気さく、でも立ち居振る舞いはお上品だ。
「(ある種、ギャップ萌えだわ)」
「京にはいつまでいるの?」
「後2、3日はいる予定よ。琴葉が京文化を見て創作意欲を湧かせて次の仕立ても頑張りたいらしいわ」
「お針子なの?」
「う、うん。でもまだお針子の端くれって感じだけど」
「それでも凄いわ!私裁縫は全然出来ないのよ。そうだ、今度私の着物、作ってくれる?」
千に褒めてもらえた事が嬉しかったのか、琴葉は二つ返事で了承し、だんだん会話も弾んで来た。
「へえ、あなたたち信長殿の元に住んでいるのね。で、琴葉は家康殿と恋仲で近々駿府城に行くと‥‥‥幸せ者ね!」
「琴葉と家康さん見てたらもうお腹いっぱいだわ」
「え、そんなに?!恥ずかしい‥‥」
「美桜は好きな殿方はいないの?」
急に聞かれ、考えるがいくら考えても気になる人は浮かばない。
「いないわ。全員、クセが強いし」
「光秀さんとか相性良さそうだけど?」
「あの人と付き合うとなると骨が折れるわ。師弟関係で十分‥‥」
十分と言いつつ、光秀さんの顔が頭に浮かぶ。
「(いや、ないない。確かにかっこいいけど、ないない‥‥)」
自分自身に言い聞かせ、千に聞く。
「千こそ、好きな人とかいないの?」
「いないわ、それに婚約してるし」