第13章 平和への道
「(我儘を言ったんだ。絶対に説得を成功させる‥‥)」
信長様の号令で作戦通りに出陣した。
顕如軍との戦はこちらが圧勝だった。
兵を殆ど失い、顕如は森から逃げようとしたが私と信長様、秀吉さんで捕まえた。予想通り、蘭丸くんも一緒だった。
「早く私を殺せ。‥‥こいつは無関係だ。殺すのは私だけで十分だ」
「?!嫌です、顕如様!俺も一緒に!」
「駄目だ!!!」
顕如の声が当たりに響く。私は二人の前にしゃがんだ。
「今回の戦、あなた達は勝ち目が無いとわかっていながらも戦った。‥‥信長様を殺す事は無理だとわかっていた、それでも何故あなたはやめなかったのか‥‥これまでに戦で死んでいった自分の門徒達の為、ですよね」
図星を突かれたのか一瞬、顕如は目を見開いた。
「ここで諦めたら何の為に門徒達は死んでいったのか、戦で自分に着いてきてくれたが為に死んでしまった。‥‥だから弔い合戦をしていたんですね。誰にも言わずに‥‥」
昨晩ずっと考えていた。顕如が勝てない戦に出てまで戦い続ける理由。
ふと二重の意味があるとわかり、益々殺してはいけないと思った。
「今更だ。復讐鬼に堕ちた身、陽の元へはもう歩けまい」
「まだ機会はあります。死んでいった門徒達もあなたに生きて欲しい、そう思っているはずです。だから戦であなたの盾となり命を捧げた‥‥他でも無い顕如という一人の人にこの先、平穏に過ごして欲しかった。いつの間にかお互いがお互いを思い過ぎてこうなった‥‥もう、あなたは復讐なんてせずに穏やかに余生を過ごして下さい。それが死んでいった仲間を報いることのできる唯一の方法です」
「‥‥顕如様、生きましょう。俺もあなたにまだ生きて欲しいです。過去にしてきた事は誰にも許されません。生きて償いましょう‥‥‥俺も行きます。これは俺の意思です、拒んでも着いて行きますからね」
完敗だと思ったのか、顕如は涙を流した。蘭丸くんも泣いている。
私は短刀を出し、縄を解いた。二人は立ち上がり、何処かへ歩こうとしていた。
「‥‥蘭丸」
信長様に呼び止められ蘭丸くんは振り返る。体が強張っているのが目に見えてわかる。
「息災でいろ。小姓として最後の命だ。死ぬな」
「‥‥‥っ、はいっ」
蘭丸くんは涙を流しながら顕如を支え歩き出した。