第13章 平和への道
翌日、織田、上杉・武田軍は顕如のいるアジトへ向かった。
道中、幾つかの部隊に分かれてアジトを囲むという作戦だ。
家康さんと佐助くん、政宗と幸村、謙信様と信玄様、信長様と秀吉さん。
この二人組の隊らしい。佐助くんは家康さんのファンらしくどうしてもとお願いしたのでこの編成になった。
「(佐助くんの家康さん愛は強いわ‥推し武将とか言ってたけど家康さんはとても迷惑そうな顔をしている‥‥)」
現に出立前も家康さんに握手して下さいと言っていたそうだが「なんでだよ、絶対嫌」と言われていた。それでもめげずに佐助くんは家康さんに話しかけている。鋼のメンタル‥‥
私もまた男装して兵として役に立てと信長様から言われ仕方なく着替えて馬に乗った。
琴葉は後方で看護をする事になっている。その方が前線に出るより少しは安全だ。
「美桜」
信長様に呼ばれ振り返る。
「蘭丸をどう思っている」
蘭丸くん‥‥少し話した程度の子だけど悪い人じゃない‥‥
「‥優しくてみんなを明るくしてくれる子だと思いました。きっと信長様の小姓と顕如の間者という立場で揺らいでいたはずです。‥‥また戻って来てとは言いません。だから、自分を責めないでと一言言ってやりたいです」
「ふっ、やはり貴様はおもしろい。俺の隊に編成して正解だったな」
そう、私はこの戦で信長様の隊に加わる。最も危険な任を背負う隊だ。一番顕如に遭遇する確率が高い、という事は蘭丸くんにも会える確率がある。
秀吉さんの調べでは蘭丸くんは顕如に一番近い人物、顕如の側を離れる事はないだろう。
「(蘭丸くんだけじゃない、顕如とか言う人にも死んで欲しくない。本能寺の夜、森で一度だけ会って怖そうだったけど瞳の奥には優しさが隠しきれてなかった‥‥)」
敵にも死ぬなと思う自分の甘さをバカだと思うが、人が死なないに越した事はない。
「(織田軍と上杉・武田軍で連合軍になったから兵の数も顕如達よりも少しは多くなった。顕如からすればこれは負け戦に近い‥‥どう出るのか、それ次第で私の出方も変わる‥)」
昨日、信長様達にまた無茶をお願いした。
蘭丸くんと顕如をどうか殺さないで欲しいと。
この戦で戦意喪失させ、どこかで穏やかに暮らして貰いたい。
だから私に説得をさせてくれとも頼んだ。秀吉さんと家康さん、謙信様は猛反対したが、信長様、信玄様は賛成してくれた。
