第12章 協定
作戦も纏まり、明日から顕如のいる場所へ向かう事となり軍議は解散した。
「美桜さん、琴葉さん」
廊下で佐助くんに呼ばれて立ち止まる。
「佐助くん、どうかした?」
「もうすぐワームホールが開く二週間前だ」
乱世に来てもうそんなに経つのか、最初は早く帰りたいと思っていたが今は違う。
「佐助くん、私達ここに残る事にしたの」
「え、君達も?」
「『も』って事は‥」
「ああ、俺もここに残る事にしたんだ。このままあの人達を置いて帰れそうにないです」
「私達も同じ。いつの間にかここにいる人達が大切になったわ」
「じゃあ、現代人仲間三人でこれからもよろしくね!」
琴葉が私と佐助くんの手を取りにっこり笑う。
「こちらこそよろしく。また落ち着いたら天井裏から顔を出すよ」
「相変わらず面白い登場の仕方ね」
三人でわいわい話していると秀吉さんが鬼気迫る顔でこちらに走って来た。
「おい、お前達。蘭丸を見なかったか?!」
「蘭丸くん?見てないけど」
「クソっ、やっぱり蘭丸は‥」
「間者だったって事かな」
秀吉さんの言う事を先に言ったのは信玄様だった。
「信玄、何故それを‥」
「こう見えて俺は全国に情報を張り巡らせているからな。‥それで、彼はいつ居なくなった」
「恐らく、軍議が終わって直ぐだ。以前から顕如の行方を調べているうちに蘭丸が間者である事が分かった。‥この事を信長様に報告し、泳がせておくよう命が下った。確証がなかったが、今この場で蘭丸が顕如の放った間者である事が判明した」
「信長様は蘭丸くんが居なくなった事をご存知で、?」
「今、家康が伝えに行っている。まさか本当に蘭丸が‥」
秀吉さんはよほどショックを受けているらしく手を頭に当てている。
「‥もう、なりふり構ってられないな。明日で決着を着ける。その覚悟で行かないと情が移っちまう」
苦渋の決断なのだろう。秀吉さんの手から血が出ている。拳に爪を深く食い込ませているのが見えた。
「(‥蘭丸くん。最初から信長様を裏切るつもりで‥?)」
蘭丸くんと話したのはほんの数回だが彼が悪い人には見えなかった。
蘭丸くんが居なくなった事は信長様の耳に入り、夜更けに作戦を一部変更して出陣すると通達があった。