第12章 協定
信長様から提案に応じるという返事を頂いた数日後、私のわがままを聞いてもらい、指定した場所、日時で会合が始まる事になった。
そして、両軍の面々が広間に集まっている。織田軍からは信長様、秀吉さん、家康さん、蘭丸くん。上杉・武田軍からは謙信様、信玄様、佐助くん、幸村が出席している。
「本日はお集まりいただきありがとうございます」
謙信様、信玄様にこの会合の指揮はお前が執れと言われ、緊張しながらも司会を勤める。だから、今回は男装をせず、普段の姿のままだ。琴葉から貰った羽織は戦で破れたが繕ってもらい、今も纏っている。いわばこの羽織が私の鎧だ。
「久しいな、美桜、琴葉。信玄、謙信の発案なら聞き流していたが、貴様が言ったとなると応じる以外他はない」
「‥それはこちらも同じ事だ。余興はここまでだ。本題に移れ」
謙信様に催促され、本題に入る。
両軍とも顕如の急襲で兵を失っており、カタをつけるために早々に顕如を倒したいと一致した。
「‥‥では、今日より織田軍、上杉・武田軍の一時的な停戦及び同盟を組む事をここに決めます。両軍、異論はないですね」
「ああ」
「無論」
「まずは顕如を倒す。それが終われば解消だ。信長、それまで首洗って待ってろ」
「ふっ、貴様もな、信玄」
信玄様は信長様に領地を奪われた、憎んでいるのに私の提案に乗ってくれ感謝しかない。このまま同盟関係がずっと続けば良いと思っているが無理そうだ。
会合はこのまま作戦会議となり、私と琴葉はお茶を淹れるため退室した。
「ふう、緊張した」
「カッコよかったよ、美桜。親友としてなんだか誇らしい」
「ありがとう。なんとか、同盟を結べて良かったわ。一時的だけど」
「そうだね。このままずっとって訳にはいかないかな」
琴葉も同じ事を考えているとは思わず、驚いて目を見開く。
「だって、私達にとったら織田軍も上杉・武田軍も大事な人達だもん。仲良くして欲しい‥」
「そうね、私もできれば両軍が戦わずこの先仲良くして欲しい。でも、こればかりはどうにもならない‥」
「そうだよねえ、簡単には無理かあ」
淡い希望を胸に私達は厨に向かった。