第11章 春日山城
それからまた数日が経ち、毒に侵された身体は見事に回復した。
義元さんの言った通り、その晩、宴が開催された。
「本当に不思議。私達は敵側なのにこんなにもてなされるなんて‥」
「そうね‥理由はわからないけど、こうやって宴を開いてくれるのは嬉しいわね」
琴葉と話していると信玄様が歩み寄って来た。
「やあ姫達、一杯どうかな」
「「ありがとうございます」」
信玄様にお酌をしてもらい、お酒を飲む。甘さのあるお酒で飲みやすかった。
「このお酒、甘くて美味しいですね」
「お、この美味しさがわかってくれるとは。謙信のやつ、『甘い!』って言って飲んでくれないんだ」
上座にいる謙信様の方を見ると目が合った。
「美桜、こちらに来い」
「は、はい」
謙信様の側へ座り、お酒を注ぐ。
「身体は回復したようだな」
「はい、ありがとうございました。今こうして居られるのは謙信様をはじめ、みなさんのおかげです」
牢で謙信様と対峙してから、姿こそは見せないものの部屋に果物が置かれている事があった。そのおかげで警戒心は解け、前に比べ憎いなどは思わなくなった。
「ならば明日、俺と手合わせをしてもらおう」
「言ってましたね、そんな感じの事。真剣はやめてください、流石に怖いです」
「仕方ない、模擬刀で譲歩してやろう」
暫く談笑し、琴葉を呼んでこいと言われた。
「琴葉、謙信様が来いって呼んでる」
「今行きまーす」
琴葉と謙信様の方を見ると、謙信様はやたら琴葉に近い気がする。琴葉は家康さんが好きだけどまだ想いは伝えてない、でも家康さんも琴葉が好きだと直感で感じる。
琴葉と目が合い、SOSを私に出しているが事の成り行きを見守っていたいので頑張れと口パクをした。
「よー美桜、こっち来いよ」
「幸村、佐助くん、義元さん。たくさん食べてるね」
「まーな」
「謙信様と何を話していたんだい?」
「明日、手合わせしろって言ってたわ」
話た内容を言うと佐助くんと幸村は固まった。
「美桜さん、頑張って‥」
「お前やっぱすげーわ。あの謙信様からの手合わせを断らないなんて」
「条件で模擬刀でお願いしたら渋々頷いてくれたけど、みんな断るの?」
「謙信は断っても問答無用斬りかかってくるからね。断れなかったのが嬉しかったんじゃない?」