第11章 春日山城
佐助くんに投げたのは牢の鍵で、琴葉は一目散に私のところへ走って抱きついた。
「美桜!良かったあ無事で‥まさか謙信様とやり合うなんて‥って身体すごい熱いよ?!」
「美桜さん、部屋に戻って休もう。美桜さん?!」
とうに限界を超えていた私はまた意識を失った。
私が目覚めたのは翌日。部屋にはたくさんの人が見舞いにきてくれていた。
「にしてもお前、よく単騎で突進してきたよ。イノシシか?」
「女性に対して失礼だ、幸村」
「いや、あれはどー見てもイノシシだったな。それに男が来たかと思ったら美桜だったし‥頭グッチャグチャだよ」
「私の男装は完璧だったって事ね。バレたのかと思った」
「信玄様は女性だとわかった瞬間、顔が変わりましたよね」
「心外だなー、野郎だと思ってたら実は花のような女の子だと知ったら誰だって変わるさ」
「まあ、元に家臣達も顔付き変わったもんなー」
敵陣にいるとは思えないほど和やかな空気が流れていた。
「にしても美桜がまさか駆けつけてくるなんて思わなかったよ、しかも、毒まで盛られてたのに!」
「私もまさか矢に毒が仕込まれているなんて思わなかったわ」
「だからって無茶だよ‥」
和気藹々としている中、部屋にまた一人、誰かが入って来た。
「美桜、具合はどう?琴葉も解放されて良かった」
この声は、と思い見上げるとそこには義元さんがいた。
「よ、義元さん?!どうしてここに‥」
琴葉が驚きを隠せずに尋ねる。
「義元は俺の遠縁のやつで、表舞台から下りてここにいるんだ」
「(そういえば、佐助くんと幸村と一緒にいた。ここにいるのも不自然じゃない‥)」
なんとか理解してもあまりにも驚き過ぎて声が出ない。
「まさかそんなに驚かれるなんてね。隠しててごめんね」
「い、いえ、義元さんが謝る事はないです!」
師と仰ぐ義元にまた会え、琴葉は嬉しそうだった。
「美桜が回復したら宴を開くそうだよ」
「宴ですか、?どうして‥私達はここの人間ではないのに」
「君達、謙信に気に入られたんだね。女嫌いで有名な謙信が、ねえ」
義元さんが意味深そうに言う。私達は気に入られる事を何かしたか、と考えるが何も思い出せなかった。