第11章 春日山城
納得してもらえるかはわからないが、嘘偽りのない理由を言った。
「ふっ、そうか。君なら大丈夫そうだ。邪魔して悪かったね」
あの理由で通してもらえるとは思えなかったが、早く琴葉の元へ向かわないと危ないと思い、一礼して私達は歩いた。
「こんな、ところにいる‥の?」
「ああ、俺と幸村で出す様言ってもこれだけは聞き入れてくれない‥。顔色がさっきよりも悪い、戻らないとまた倒れる‥」
「平気。早くしないと‥何をされるか‥」
心配してくれる佐助くんに申し訳ないと思いながら牢の通路を歩く。
「離して下さい‥!」
奥の方から声が聞こえた。
「琴葉‥?!」
体調が万全で無いのにも関わらず走って声のする方へ向かった。
柵を隔てて、謙信が琴葉の手を掴んでいた。
音を立てずに走り、琴葉の手を掴んでいる謙信の腕を強く握る。
「‥離して下さい」
自分でも驚くほど冷たい声がでた。琴葉は私が無事だと知り、目に涙を浮かべた。
「?!美桜さん危ない!」
佐助くんの叫びを聞いた次の瞬間、刀が眼前に迫っていた。なんとかバク転をして避ける。
「(?!速い‥!後もう少し反応が遅かったら死んでた‥佐助くんに感謝だな」
「俺の刀を至近距離で避けるとは‥中々にやるな。先程の駆けてくる足音も聞こえなかった。戦では男の姿で現れ‥一体、何者だ」
「忍びでもなんでもありません。ただの人間です。‥まあ、安土側の人という事はご存知でしょうけど‥」
「生意気な‥」
次々と刀が振り下ろされ、ひたすら避ける。佐助くんが助けようとしたが謙信に止めれ、事を見守っている。
「(なんとか一撃を入れないと、終わらない‥!毒でまだ回復してないから息がしにくい‥こうなったら、この技で決める‥!)」
左脚で上段への前蹴りを入れ、謙信の刀の軌道を変える。そのまま体勢を崩さず、正拳突きで腹にパンチした。
後退した謙信を見ると何故か楽しみそうだった。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ」
「(また斬りかかられたら今度こそ避けきれない‥!)」
また斬ってくると思ったが、謙信は刀を鞘にしまった。
「ふっ、久しぶりに手応えのあるやつと手合わせできたな。‥女、名は」
「‥美桜、です」
「また手合わせしろ。佐助、これを」
佐助くんに何か投げ、謙信様は去って行った。