第9章 敵陣
「謙信、明日のことなんだが‥」
誰かの足音がこっちに迫ってき、私達は急いで手を離した。
「ん?珍しいな。お前が女の子と一緒にいるなんて」
大柄な男の人が来て私の方を見てにっこり笑った。
「(色気ある笑顔だな。距離が近いのは気のせい‥?)」
「‥信玄、離れろ」
謙信様が鞘に手をかけながら凄味のある声で言った。
「おー怖い怖い。‥君、どこかで見たことがあるな」
え、と思い記憶を探った。言われてみれば見覚えのある顔な気がする‥が、思い出せない。
「ああ、本能寺の夜、森にいた娘だね。もう1人の娘はどうした?」
「(思い出した!確か森にいて、信玄と呼ばれていた人だ。あの日、私達敵に会ってたの?!もう1人の娘って美桜のこと言ってる、?あんまり喋らない方が良いかも‥)」
「‥別の場所にいます」
「そうか。にしても人間と分かって安心だ。あまりにも美人だから本当にこの世に存在しないかと思ったよ。‥会えて嬉しい。俺は武田信玄だ。この後一緒にお茶でもどうかな?」
「い、いえ、結構です‥」
「(色気が半端ない。口説くのも上手いし、気をつけないと‥!)」
残念と言いながら笑っている信玄様を横目に謙信様はなぜか殺気立っている。
「信玄。その口、切り落としても文句はないな?」
抜刀し信玄様に襲いかかるが、慣れているのか受けかわしている。
「それは困るなー。大好きな甘味が食えなくなるし女の子とも話せなくなる」
これは止めた方が良いのかと思いながら見ていると聞き覚えのある声がした。
「謙信様、それ以上暴れないで下さい」
「信玄様!あんた甘味持ってきただろ!没収です!」
「(なんで、ここにいるの、?)」
そこには、いるなずのない佐助くんと幸村の姿があった。
織田軍の敵に仕えているとは聞いていたけど、よりによって上杉・武田軍だとは思わず、驚きが隠せない。
「さ、佐助くん?!幸村?!」
2人は私がいる事に今気づいたようだ。
「琴葉さん?!君がどうしてここに‥」
「‥ちっ、めんどくせーことになったな」
2人の反応を見ていた謙信様が聞く。
「お前達、何故こいつを知っている。返答次第では斬る」
「どうどう、落ち着いてください謙信様。今から説明しますから」
刀を突き付けられても佐助くんは冷静だ。これが日常茶飯事なのかな?