第9章 敵陣
「俺と琴葉さんは同郷の友人です。それ経由で幸村とも知り合った、というところです。もう1人、同郷の友人はいますが今は安全な場所にいます」
佐助くんの説明を聞いて納得したのか、謙信様は刀をしまう。
「謙信様、琴葉の前なんですから直ぐに刀出すのはやめてください」
「お前達が妙な事をしなければ良いだけの話だ」
「謙信様、どうして琴葉さんがここに?」
佐助くんがさっき私が聞いた事と同じ質問をする。みんな気になってた様で謙信様の方を見る。
「知らん。連れてきたかった、それだけだ」
場がしんと静まる。3人とも目が大きく見開いている。
「驚いたな」
「うわー、まじか」
「明日は嵐かな」
三者三様のことを言った。謙信様はその態度に気に入らなかったらしくまた抜刀しようとした。
「お、落ち着いてください、謙信様!ここは平和にしましょう!」
「‥‥仕方ない」
「ナイスフォローありがとう琴葉さん」
謙信様は言うことを聞いてくれ、この場は一先ず収まった。
「琴葉、悪い事は言わねー。謙信様はやめとけ」
「なんの話?!」
幸村になにか勘違いをされ、謎の助言をもらう。
敵陣にいることを忘れそうになるほど和やかな空気だった。
謙信様、信玄様、は明日について離すことがあるからと、今日私が泊まる天幕までの案内を佐助くんがしてくれた。幸村は装備の確認をするからと一緒には来なかった。
「まさか琴葉さんがここにいるとは思わなかった」
「驚かせてごめん!私もよくわかんなくて‥」
「君が謝ることはない。うちの上司がすまない。分かりづらいがああ見えて部下思いなところもある。少し難ありだけど」
「うん、すごく難ありだね。でも少し分かった気がする。謙信様のこと、信玄様のこと。あ、明日ちゃんと織田軍の元へ返してくれるって!」
「安心した。返さないと言っていたかと思った」
佐助くんの表情はいつもとあんまり変わらなかったけど、少し口角が上がっていて、本当に安心してるんだなとわかった。