第8章 開戦
「えっとね、信長様に聞いたんだ。さっき俺のこと庇ってくれた男の人誰?ってそしたら『あいつは女だ。俺の命を助けた。名は美桜だ』ってね。琴葉様のことも聞いたよ」
「(信長様が教えたのなら納得がいく。男装が下手になったのかと思って焦った‥)」
心の中で安堵の息をついているとギュッと両手をやさしく握られた。
「ずっと、お礼が言いたかったんだ。ありがとう!あの時、俺のこと庇ってくれて。すっごくカッコよかった!」
「(笑顔が眩しい‥!わざわざお礼を言いに来てくれるなんて‥)」
蘭丸くんの笑顔を見ると心があたたかくなる。自然と笑みが出てくるところを見て蘭丸くんはより一層手を強く握った。
「美桜様、もっと笑いなよ!綺麗な笑顔だよ!あ、俺のことは気軽に呼んで、あと、敬語はなし!もっとたくさんお話ししたいけど‥生憎状況がこれだから、終わったら、お城で琴葉様と三人でお茶しようね!それじゃ!」
「うん、またね」
蘭丸くんは手を振りながら持ち場に戻っていった。
そうこうしているうちに眠くなってきて天幕に入った。明日、誰も死なずに帰って来れる事を願いながら‥
「浮かない顔だな、蘭丸」
蘭丸が一人、天幕の外へいると光秀が音もせずやってきた。
「もー、相変わらず足音しないんだから!味方にくらい心を開いてくれたっていいのに」
「悪いな、生憎俺は元からこういう性分でな‥単刀直入に聞こう、お前何か隠していないか?」
蘭丸の目が僅かに見開く。光秀はそれを見逃さなかった。が、本人の口から直接聞きたいと思い、話すのを待った。
「‥‥なーに言ってるの、光秀様?俺が可愛いからって酷いなあー。なーんにも隠してないよ」
「美桜の前でも同じことが言えるか」
「なんで美桜様がここで出てくるの?あの子はなんにも関係ないのに」
「‥そうだな。まあ、お前が何も隠してないならそれで良い。だが、嘘をついていると分かった暁には‥わかるな?」
光秀が一歩迫って来ても蘭丸は怯むことなく見据える。
「うん。って、顔ちかーい!俺はそーゆー趣味ないからねっ!」
「何か勘違いしているyいうだが、俺とてないぞ」
「どーかなー。光秀様の方が何か隠してそうだけど、まっ、いいや!明日も早いしお先に失礼しまーす」
蘭丸が入って行った天幕を光秀はしばらく見つめていた。