第8章 開戦
上杉・武田軍が支城攻めに進軍して来たと報告を受けた翌日の早朝、信長様を筆頭に光秀さん、政宗、家康さんとその家臣の方達そして、琴葉、私は戦場へ向かった。
私は光秀さんの馬に、琴葉は信長様の馬に乗せてもらっている。
当然、家康さんは琴葉が信長様と乗馬することに猛反対したが「こいつは幸いを運ぶ女だ。よって俺の馬に乗る方が縁起が良い」などと言って全く譲る気なし。家康さんは渋々返事をしていたが雰囲気から不服そうなのが伝わってきた。政宗はそのやり取りを見てずっと笑いを堪えれいた。
私はといえば‥‥
「光秀さん、馬の扱い方これであってますか?なんだかどんどん行軍から離れていってる気がするんですが‥」
「そうだな、このまま行けば崖に突っ込むだろう」
「それを早く言ってください!ど、どうすれば‥!」
「自分で考えるのもまた大事だ。覚えが良くなる。さあやってみろ」
「(そうは言われても‥!)」
一人で乗馬できるようになれとつい先程言われ、今に至る。行軍が歩兵のためにゆっくり進んでいる今のうちに習得しろとのこと。
「(このまま崖に行くのはまずい、減速させ、戻らないと)」
一心不乱に手綱を引いた。馬は素直に命令を聞いてくれ、なんとか来た道を戻り、行軍に辿り着くことができた。
「光秀、行軍中に散歩か」
信長様がにやりと笑い、馬を寄せて来た。光秀さんも人の悪い笑みを浮かべる。
「ええ、小娘と馬の散歩に少々付き合っていました」
「ふっ。俺の持ち物であることを忘れるなよ」
「御意」
お互い、終始何を考えているかわからない笑みをしており、この二人がコンビを組んだらただならないことが起きると直感で感じた。
数日して、目的の場所へ辿り着き、早くても明日開戦と信長様はおっしゃっていた。
夜になり、緊迫した状態の中、誰かが話しかけに来た。
「えっと、美桜様だっけ?」
「(確かこの人は、軍議中戻って来て攻められてたのを助けた‥‥森蘭丸くん)」
「そうです。よくこの姿で私が美桜だとわかりましたね。広間の件でもあなたの前でも私は一切男装を解いていないのに」
「(私の男装は前よりも上達したと思っていたが、一体どこで分かったの?)」
純粋な疑問をぶつける。彼ははぐらかすことなく答えてくれた。