第2章 本能寺
「あなたもタイムスリップしてきたの?しかも忍者の格好って‥」
「順を追って説明する。俺の名前は佐助と言って‥君たちと同じ現代人だ」
驚く私達に、佐助くんはこれまでのできごとを説明してくれた。
「なるほど、あの雷が原因で時空が歪んで、私達は飛ばされたと」
「大まかには合っている。で、おれは君達と一緒にタイムスリップして、今から四年前に飛ばされたんだ。この四年間で分かったんだけど‥ここは、俺達が習った戦国時代とは違っている」
(?!)
またも驚く私達に佐助くんは説明してくれた。
佐助くんがタイムスリップした先は、上杉謙信が倒れかけていた場所で‥私達が織田信長を助けたのと同様に、上杉謙信の命を助けたらしい。
史実通りなら、そこで上杉謙信は死んでいた。
その上同じように、死んでいたはずの武田信玄もこの世界では生きているのだと、佐助くんは教えてくれた。
「めちゃくちゃですよ‥」
「でも事実だ。タイムスリップした瞬間に、時空が歪んで、歴史が変わってしまった」
頭がもう混乱している。とにかく今日の寝所はどうしよう。
「俺と一緒にくれば大丈夫。帰れるのは三か月後だ。だから‥」
何かを言いかけていた佐助くんは突然姿を消した。
「(え、今忍術披露されても‥!)」
困惑していると馬の蹄の音が聞こえて来た。
「美桜、琴葉、どこだ?」
「「この声、秀吉さん?!」」
大きい声をあげる暇もなく二頭の馬が目の前で止まった。
「漸く見つけた」
「‥‥っ」
秀吉さんに見下ろされ、唇を噛む
「訳のわからない理由で、信長様の前から姿を消すな」
「そんなこと言われても、あんな命令聞けません」
言い返した時、もう一頭の馬から笑い声が聞こえてきた。
「お前達が、美桜と琴葉か。信長様に食っててかかったって話は本当らしい」
「はあ‥もう、また誰ですか、武将ですか」
半ばヤケクソになって言う私に、眼帯をした男は、馬上から腕を伸ばす。
「その通りだが‥そこじゃ話しにくいな」
「えっ‥‥わっ?!」
片腕で軽々と抱き上げられ、私は彼の馬の背に乗せられた。
琴葉は秀吉さんの馬に乗せられていてひとまずほっとしていると、鋭く交戦的な笑みが目の前に迫る。
「伊達政宗だ。覚えろ、美桜」
「(伊達政宗?!私なんで眼帯で気づかなかったの!)」