第17章 思惑
六日後、特に大きな問題もなく過ごせていて逆に恐ろしいくらいだ。
「(嵐の前の静けさって感じだわ‥‥)」
部屋の窓から景色を眺めているとドアがノックされ女中さんが入って来た。
「帰蝶様がお呼びです。商館長室までご案内いたします」
「(帰蝶が呼んでいる?ここに来て一回も顔を合わせなかったのに一体どうして‥)」
疑問しか湧かないが帰蝶と話せる絶好の機会だと思い、案内された扉をノックした。
「来たか。そこに座れ」
元就の姿はなく、今は帰蝶一人のようだ。促されソファに座る。帰蝶は机を挟んだ目の前に座った。
「ここでのお前の様子は聞いている。女中の様に働き回りつつ、情報を集めているそうだな。慎太郎とも仲が良さそうで何よりだ」
「(全てバレていたのね。嘘をついて隠し事をしても結局は筒抜けってワケね)」
「そうです。ずっと部屋に篭っていたらおかしくなりそうだったので」
「お前に邪魔をされようが俺たちの計画は止まらない。何をしても無駄だ。既にもう事態は動いているのだからな」
温度のない目で見つめられ、背筋が凍る。
「無駄とは限りません。私にできる最大限の事をする、それだけです」
事態が動いていようが情報を集め、伝える。これだけは何としてでも成さなければならない。
「好きにするといい。‥‥お前の出自を調べたが、織田に来る以前の情報が全くない。美桜、お前はどこから来た?」
「私は、‥‥五百年先の未来から来ました」
信じてもらえるかは五分五分だ。でもポップコーンを知っているなら信じてもらえるだろう、そう確信はあった。
「やはりか」
「知っていたのに、聞いたのですか?」
「確証がなかった。だがお前が正直に言った事でタイムスリップが存在していると確かめれた」
このチャンスを逃がせばもう聞けないだろうと思い、私は気になっていた事を質問した。
「あなたは何故ポップコーンを知っているのですか?」
部屋に沈黙が続く。聞いてはいけない事だったか、だが今更だ。
答えてくれるまで何度でも聞こう。
「俺は以前一度だけ五百年後の世に行った事がある。そこでポップコーンの存在を知った。それだけだ」
「(五百年後に行った事がある、?ならあの平和な世を見て来たはず‥‥なのに自ら戦乱を望む理由は一体‥‥‥)」