第17章 思惑
翌日、私は慎太郎さんにある相談をした。
「外部との連絡を取りたい、?」
「はい。織田軍に文を送りたいのです。私が無事である事と今私が持っている情報を少しでも伝えたい。できますか?」
話を聞いて慎太郎さんはうーんと腕を組む。
「残念ながら、難しいと思います。私も外部との連絡手段を潜伏中はずっと模索しているのですがここは厳重過ぎて‥‥ここを抜け出さない限りはほぼ不可能だと思います」
「そうですか‥‥。じゃあ慎太郎さんはここにきてから誰にも連絡を取れていないのですね」
「ええ。本当は潜伏中に集めた情報を都度伝えたかったのですが‥‥」
「慎太郎さんはいつここを出ようとか考えているのですか?」
「頃合いを見計らって出ようとしています。丁度七日後にここで宴が開かれる様なのでその隙に主の元へ帰ろうと思っていました。でも、美桜様がここに暫くいる以上、私も残ります」
「それはダメです。私の事は気にせず、ここを出て下さい。あなたの務めは帝に情報を伝えて策を立てる事でしょう。なら、私の事は気にせず行って下さい。‥‥それと、一つだけお願いがあります」
慎太郎さんが抜け出すならチャンスはここしかないと思った。
「織田軍宛の文を届けて欲しい。慎太郎さんにしか頼めません、届けるのが遅くなっても構いませんのでお願いします」
頭を下げると二つ返事で了承してくれた。
「早めに届ける様にします。‥‥さて、堅苦しい話はこれくらいにして、お茶にしませんか」
にっこりと笑って提案してくれたので断る理由もなかったので快く誘いに乗った。
「京にいらしていたのですか。千姫様にお会いになられましたか?」
「はい、妹のお豪ちゃんにも会いました。慎太郎さんがいなかった理由が今わかって安心しました」
「ははっ、ご心配をしてくれてありがとうございます。私はこの通り元気ですよ」
世間話をして久しぶりに誰かと楽しく話した至福の時間だった。