第16章 決断
「美桜様!そんな事してはいけません!」
「こいつらが本当に言う事を聞いてくれるかもわからないのに!」
「大丈夫ですよ。私の勘は割と当たるので」
務めて明るい声で兵達を落ち着かせる。
「(本当は怖い。上杉・武田軍に単騎で追った時とはまた違う恐ろしさがこいつらにはある。でも、自分だけ助かって兵達を見殺しにするような事は絶対に嫌。)」
一歩、また一歩と男達の方へ歩く。だがどこからか銃声が聞こえた。
パァン
「‥‥なっ!」
後ろを見ると織田の兵が一人蹲っていた。
「俺達を舐めた罰だ。これで分かっただろう、俺達を下に見るとどうなるか‥‥」
撃った男が言いたい事を最後まで言えなかった。私が鳩尾に蹴りを入れたからだ。
「チッ。面倒な事をしてくれたぜ。おい、こいつを始末しとけ」
褐色色の肌の男も想定外だったのか苛立ちを隠せていない。指示された部下達は倒れている男を担いでどこかへ連れ去った。
私は急いで撃たれた兵の手当てをする。琴葉に戦の前に少し教わっておいて良かったと思う。
「腹部を撃たれています。早急に救護天幕へ連れて行って下さい」
「美桜様はどうなさるおつもりで‥‥」
「あいつらと話をしてきます。向こうは条件を守らなかった。お詫びくらいに人質の件は無しにしてもらわないとですね」
「それはできない話だ」
会話が聞こえていたのか、白い外套をした男達が迫ってくる。
「できない?何故ですか。それと‥‥あなたのお名前、何ですか。私の名前は知っているみたいですけど‥‥」
「‥‥‥帰蝶だ。そしてこの男が毛利元就」
「(帰蝶?!この男が‥‥!安土城を砲撃した首謀者。毛利元就も本当に生きていたのね‥‥)」
「できない理由だが、教える事はできない。だが身の安全は保証する。この言葉は約束しよう」
「ここは素直に聞いておいた方が良いと思うぜ。何せそっちには怪我人がいるからなァ」
「あなた達の部下が撃ったからのこうなったらのでしょう」
「ああ、だからせめてもの詫びだ。反乱軍はもう時期撤退するだろう」
織田軍が勝ったという事を詫び代わりに教えてもらったが割に合わない。