第16章 決断
「美桜様にそうおっしゃって頂けると自信持てます!」
私が男装の身であるながらも何故本名で呼んでくれるのか。それは顕如との戦が終わってから体術稽古が始まる時、素性を明かしたからだ。だから今は声も仕草も素のまま。
「師範が女の人と知った時は本当に驚きましたよ」
「俺達よりも強いから絶対男だと思っていたんです!でも男の割には小さいなとは思っていたのですが‥‥」
「身長はどうしようもないですからね。でも男装が完璧だったという事ですね。嬉しいです」
「声も仕草も完璧過ぎて言われるまで全く気づきませんでした‥」
「でも、男だろうが女だろうが、俺達の師範は美桜様だけです!」
「ふふっ。ありがとう。私も君達のような弟子を持てて良かった」
戦場では似つかわしくない事話していると森の茂みがガサガサと音を立てた。
「何奴?!」
兵達が一斉に刀を抜き、構える。私も小太刀の柄に手を乗せる。
すると10人以上の男達が姿を現した。
「(誰。少なくとも味方ではない。敵の兵がここまで少数で来た?)」
両者睨み合っていると白い外套を着た男と褐色色の肌をした男が足音も立てずにこちらに向かってきた。
「(この男。京でぶつかったあの時の‥‥!)」
「‥‥ポップコーン男‥‥」
「覚えていたか、なら話は早い。美桜、この場で争いたく無ければ俺達と来い。そうすればこの兵達の命は助けてやろう」
確かにこの場で争うとなると分が悪い。こちらは5人に対し、敵はざっと見ただけで15はいるだろう。それに銃持っている。尚更こちらが不利だ。
「美桜様!こいつらの言う事を聞いてはいけません!」
「ここは任せて、お逃げください!!」
兵達が必死に私を逃そうとするが、例え私が逃げたとして、この人達は恐らく一瞬でやられる。2対1、3対1になって戦うからだ。
「(弟子を守るのが師の務め)」
「分かりました。あなた達と一緒に行きます。ただし、この兵達を、そして救護天幕を絶対に襲わないこと。私の身の安全を保証すること。この二つが条件です。呑めないのなら従いません」
「注文の多いお姫さんだな。だが背に腹はかえられねえ、だろ」
「ああ、そうだな。仕方ない。お前の条件を呑もう」