• テキストサイズ

モニタリング

第10章 遠回り


1日中、仕事に追われた身体を引きずるようにして帰宅したミクはスーツの上着を玄関先で脱ぎ捨てヒールを脱いで無造作に蹴飛ばすと、そのままリビングに沈み込むように座り込んだ。

部屋は静まり返っている。

冷蔵庫のモーター音と、エアコンの微かな風音だけが耳に残る。

何かをしていないと、考えてしまう――

あの人のことを。

伏黒甚爾。

不意に名前が頭に浮かぶと、背筋がぞくりとした。

乱暴で無遠慮で、けれど熱を孕んだあの視線。

脳裏に焼きついて離れない指の感触。

ベッドの上で何度も抉るように突き上げられた記憶が、じんわりと身体を疼かせる。

「……ばかみたい。」

苦笑しながら立ち上がり、バスルームに向かう。

シャワーの音で雑念を流したかったのに熱い湯を浴びるほどに、彼に抱かれた夜の記憶が鮮やかに蘇る。

鏡に映る自分の身体。

項に残った淡い痕が、名残を物語っていた。

「また……こんな……。」

ミクはバスタオルを巻いたままベッドに横たわると、脚を緩く開いた。

指先が太腿に触れただけで、敏感に震える。

彼に責められるように、荒々しく押し倒されたい――。

「甚爾さん……。」

呟いた瞬間、熱が腹の奥で爆ぜた。

自分で触れているのに、彼に抱かれているような錯覚に陥る。

指先が秘部に触れようとした――

その時だった。

――ピンポーン。

インターホンが鳴る。

身体が跳ねる。

心臓が一気に現実へと引き戻され、焦燥と羞恥で全身が熱くなる。
/ 199ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp