• テキストサイズ

モニタリング

第9章 どうでも良い


玄関の扉が閉まる音が、ひどく重たく響いた。

それと同時に、無遠慮な足音が床を踏みしめていく。

「……ちょっと、待ってよ……!」

ミクの声はかすれながらも、いつになく強かった。

甚爾がリビングへとずかずか入ろうとしたその背を、言葉で止める。

「勝手に入らないで。帰って。」

甚爾の動きが止まる。

振り返ることもせず、ただ1拍、間を置く。

それだけで背筋が粟立つような緊張が走る。

甚「……は?」

ゆっくりと振り返った甚爾の顔には、明確な不機嫌があった。

だがそれは怒りというより呆れや苛立ち、そしてどこか…

寂しさのような、言葉にしがたい感情が混ざっていた。

甚「何、いきなりどうした。」

ミクは息を飲んだ。

言うつもりじゃなかった。

でも──

言わなければ、きっとずっと心を支配されたままだと思った。

「……あなたが前に言ってた“女”って、誰?」

静かな声。

けれどそこには確かな問いと、感情があった。

甚爾は一瞬、言葉を飲んだように眉をぴくりと動かした。

すぐに視線を逸らし、壁に寄り掛かるようにして肩をすくめる。

甚「……前の話、まだ覚えてんのか。」

「覚えてる。だって……気になって仕方なかったから。」

甚「気にする必要ねぇよ。オマエとは関係ない。」

「関係ないわけないでしょ……。あんなに、何度も抱いておいて──。」
/ 199ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp