第8章 たまには
薄暗いラブホテルの1室。
重厚な遮光カーテンが外界を遮断し、部屋には柔らかな間接照明だけが灯る。
ベッドの上――
ミクの手首は、五条悟のネクタイでヘッドボードに緩く縛られていた。
悟「ねえ……僕がどれだけ我慢してたと思う?」
低く囁かれた声は耳朶をなぞるように甘く、冷たく絡みつく。
悟の手が喉元に添えられた。
力はないが、その熱に全身が震える。
涼やかな双眸が至近距離で覗き込む。
悟「夜通し逃がさないって言ったよね。何回でも、僕のものだって、刻み込むって言ったよね。」
悟の指が喉元から鎖骨、胸の谷間へと這い、あらゆる感覚が火照っていく。
彼の唇が触れるたびに肌が熱を帯び、意思が霞んでいった。
「やだ……もう、無理……っ。」
悟「だめ。ミクがどんなに泣いても、僕は止まらない。……ずっと欲しかったんだ。誰にも渡したくなかった。」
その声音に、胸が締め付けられる。
独占欲に呑まれた彼は、まるで獣のように貪り触れるたびにミクの中の理性を溶かしていく。
脚を開かせられ、熱を持った彼の身体が密着する。
視線すら逸らせないほど至近にいる彼の目は誰よりも愛おしそうで、誰よりも狂気的だった。
悟「ねえ、ミク。アイツのこと、考えてる?」
「ちがっ……悟先輩、やめ――ん……っ、あぁ……!」
彼はミクの内側を知り尽くしたように愛撫し、何度も絶頂へと追いやった。
涙が零れても声が枯れても、悟は優しく微笑むだけ。
悟「良い子。……僕のことだけ、考えてれば良い。」
そう囁いてから、何度もキスを重ねた。
舌を絡め唾液を分け合い、名前を呼ぶたびにその響きに蕩けそうになる。