第6章 静寂の支配
静まり返った部屋に、微かに残る熱と湿度。
シーツの上で重なり合っていた身体がようやく離れ、ミクは肩で息をしながら横たわっていた。
濡れた睫毛が震え、まだ快楽の名残が体の奥にこびりついている。
そんな彼女の横で甚爾は片腕を頭の下に差し入れ、もう片方の手で無言のまま腰のあたりを撫でていた。
指先が、まるで縄のように彼女の肌に絡みつく――
まだ、彼の中では行為は終わっていないのだと告げるように。
「……ほんとに、容赦ないんだから……。」
ようやく絞り出したミクの声に、甚爾は喉の奥で笑った。
甚「オマエが悪ぃんだろ。酔って男に媚びた顔して……俺の前でそんなの、してほしくねぇ。」
「……べつに、媚びてない……ただ、普通に笑ってただけ……。」
甚「それがダメなんだよ。俺以外に“普通”の顔、見せんな。」
強引で理不尽な台詞なのに声は低く熱を孕んでいて、妙に耳に残る。
頬に掛かる乱れた髪を、甚爾の指が払う。
そして、そのままゆっくりと唇が首筋に落ちた。
甚「なぁ、ミク……まだ足んねぇ。オマエの身体の奥、もっと俺でいっぱいにしてやりてぇ。」
「え……? ちょ、待って……無理、もう……。」
甚「無理じゃねぇよ。ほら……また濡れてんじゃん。」
言いながら彼の指が内腿を割り、そっと蜜の名残を掬い上げる。
さっきまであれほど満たされていたはずの身体が、甚爾の囁きと指先に再び熱を帯びていく。
爪の先で軽く陰部をなぞられるたび、震えが腹の奥に走る。
甚「やっぱ、体のほうが正直だな……。」
キスとは呼べない、濃厚な舌の絡みつく口づけを落としながら甚爾はそのまま彼女の脚をゆっくりと広げた。
シーツが擦れる音がやけに大きく響き、もう1度、部屋の空気が熱を帯び始める。