第6章 静寂の支配
玄関の扉が閉まる音が、静寂の中に鈍く響いた。
アルコールの残り香と共にふらつく足取りで部屋に入ると、ミクの腰を支えるようにして甚爾が後ろから押し込む。
甚「……呑みすぎ。あの男、どこまでオマエに触った?」
低く沈んだ声。
普段の無頓着そうな表情は跡形もなく、瞳の奥に渦巻いているのは――
露骨な怒りと、それ以上の欲望だった。
ミクが口を開く前に、背中に彼の体温が貼りつく。
ソファまで引きずられるように座らされ、そのまま肩を掴まれ押し倒された。
甚「答えなくていい。……どうせ、俺が触れたところより浅いんだろ?」
指先が喉元から鎖骨、ブラウスの第1ボタンへと降りていく。
ゆっくりと意図的に爪を立てながら滑らせる動きが、酔いで火照った体にぞわりとした電気を走らせる。
甚「――他の男に笑ってるオマエを見たら、壊したくなった。」
一瞬、キスかと思うほど顔が近づいたが甚爾は唇を重ねない。
ただ熱のこもった吐息だけをミクの頬にかけて、そのまま耳朶を甘く噛んだ。