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モニタリング

第5章 帰り道の熱


悟「最近、なんか……他に気になる人でもいるの?」

不意を突かれた。

反射的に視線を逸らすと、彼はそれを逃さなかった。

悟「やっぱり。」

小さく笑いながら、グラスを持ち上げた。

悟「……なら僕も、もうちょっと本気出そうかな。」

その言葉に、胸が高鳴ったのは酒のせいじゃない。

ふたりの間に流れる空気が、確かに変わりはじめている。

そして――

店を出たとき、五条はミクの腰に自然と手を添えた。

悟「送るよ。今日はちょっと冷えるからさ。」

「……ありがとうございます。」

夜風が冷たく感じるほど、彼の体温は近くて暖かかった。

けれどそのぬくもりの中ミクの心の奥にほんの一瞬だけ過ったのは、“無言で背を向けて去った、あの男の後ろ姿”だった。

五条の腕の中で微かに震えるミクの感情に、まだ彼自身も気づいていない。

甚「……帰り、遅かったな。」

駅前の街灯が照らす薄闇の中。

ミクと五条が並んで歩いていた道の先、そこに立っていたのは――

伏黒甚爾だった。

ポケットに手を突っ込み、口元だけ笑っている。

だがその目には、いつもの余裕とは違う色が滲んでいた。

甚「偶然だな。……いや、そうでもないか。」

「……甚爾さん。」

ミクが小さく呟く。

その声が、静かに震えていた。

五条の足が止まる。

「……甚爾さん。こんな時間にどうしたんですか?」

その問いに、甚爾は肩をすくめただけ。

甚「聞きたいのは、こっちのほうだ。……“何してた”?」

視線はミクに向けられている。

けれどその奥には、五条への牽制がありありと潜んでいた。

悟「飲みに行っただけですよ。ね、ミク?」

五条が笑いながら言う。

しかし、ミクの返事よりも早く、甚爾の足音が近づいた。

ふわりと、煙草と革のような匂いが鼻をかすめる。

甚「へぇ。飲み……で、こんな時間まで“ふたりで”?」

悟「深読みしないでください。部下を送っていただけです。」

甚「送るだけで、そんな顔になるかよ?」

甚爾が低く笑った。

その瞬間、彼の手が伸びて、ミクの手首を無造作に掴んだ。
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