• テキストサイズ

モニタリング

第5章 帰り道の熱


シャワーの音だけが、静かすぎる部屋に反響していた。

肌に触れるぬるま湯も、癒しというよりただ無防備な感情をあぶり出すだけ。

甚爾の言葉が、耳の奥でずっと残響のように鳴っている。

『図星かよ。かわいいな、オマエ。』

『今日はもういい。女と出かける。』

その声、その目、その距離。

全部が意地悪で残酷で、でも……熱かった。

「……はぁ。」

濡れた髪を拭きながらベッドに倒れ込む。

部屋着は薄手のワンピース。

いつもなら気にならない生地の感触が、今夜は妙に肌にまとわりつく。

23:00を過ぎたスマホの画面が、1度点いた。

──“伏黒甚爾”

メッセージ通知。心臓が一瞬止まりかける。

震える指先で開くと、そこにはたった1文。

《……誰にでもそんな顔してんのか?》



それだけだった。

でも、画面の奥から体温が滲み出してくるような錯覚。

返事をしようとした指が止まる。

けれど数秒後、再び通知。

《腰、まだ痛むなら冷やせ。ほら、そういうとこ俺優しいだろ》



──優しさなんて、そんな言葉で片付けてほしくなかった。

けれど、その文章の行間からは明らかに滲む支配欲と独占欲。

あの夜の熱を再び引きずり出そうとするような、無言の誘惑。

ミクはスマホを胸に伏せ、シーツの上で丸くなった。

彼の指先が残した痕跡が身体の奥にまだ残っている気がして、思わず太ももを閉じた。

胸の鼓動だけが、深夜の静けさを破って響いていた。
/ 199ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp