第4章 これで全部
甚「ミク……。」
自分の名前を呼ぶ声に、ミクの中のなにかが決壊した。
「……ぁ、だめ……っ。」
彼の腕の中で震え、しがみつく。
それでも甚爾は緩めない。
甚「良いよ、もう……一緒に、イくぞ。」
その瞬間――
彼の身体が強く震えた。
喉の奥から漏れた、低く短い息。
そして、全身を震わせるような緊張が一気に解けていく。
すべてを預けたように彼がミクを抱きしめながら、静かに果てていく。
その熱の余韻が、ミクの身体にもじんわりと染み込んでいくようだった。
しばらく、動けなかった。
互いの鼓動だけが、耳の奥で響いている。
肌が触れ合うだけで、まだ微かに震えが残っていた。
やがて、甚爾がゆっくりと額をミクの胸元に落とした。
甚「……あー……やっべ、マジで……。」
「な、なにが……。」
甚「ハマりすぎてヤバいって話だよ。」
小さく笑う声は、ひどく安堵していた。
でもどこか、まだ名残惜しさを含んでいて――
ミクはそっと、彼の頭を撫でた。
それは、たしかに“終わった”あとの時間で。
けれど、始まってしまった「何か」を否応なく予感させる静けさだった。