第3章 知らない顔なんて出来ない
甚「……よく頑張ったな。偉いじゃん、ミク。」
そんな優しい声音のまま、彼の指がミクの髪をそっとかき上げる。
その指先ひとつで、また肌が熱くなる。
甚爾はしゃがみ込み、ミクと目線を合わせた。
その視線は熱く、揺るぎない。
まるで、今夜ここで何が起こるのか――
すでに決まっていることを伝えるように。
甚「……ここから先は、もう“途中まで”じゃ済まねぇぞ。」
「……っ。」
唇が自然に震える。
けれど、ミクの目は彼を拒絶していなかった。
むしろ呼吸は浅く肌は薄く紅潮し、視線だけが最後の理性を繋ぎ止めている。
甚「言っとくけど、今さらやめたいってんなら――もう2度と触らねぇ。」
「……それ、脅し?」
甚「確認だよ。」
甚爾の手が、ミクの太ももへ、優しく触れる。
まるで1歩ずつ、境界線を踏み越えるように――
指先は柔らかく、でも迷いはない。
ミクは、ほんの一瞬だけ目を閉じ震える息を吐いた。
そして、かすかに頷いた。
「……優しくして。」
その声に、甚爾の目が細まる。
甚「言ったな。……もう止めねぇぞ。」
ベッドが軋む音。
彼がゆっくりとミクの身体に覆いかぶさり、肌と肌の距離がゼロになる――
その直前。
部屋に満ちていたのは快楽の予兆と、理性がほどける音だけだった。