第3章 知らない顔なんて出来ない
じゅぷ……という湿った音さえ、部屋の中で官能的に響く。
恥ずかしさに眉をしかめながらも、ミクの奥は、ひとつの波に飲まれそうになっていた。
甚「……イきそう、なのか?言えよ、ミク。」
「……ッ――。」
彼の声が命令のように響いた瞬間、ミクの内側がきゅうっと収縮した。
「イく……っ、イっちゃう……ッ!」
何度目かの絶頂に身体が痙攣し、爪先まで快感が駆け抜ける。
だが――
甚爾は止めなかった。
むしろ、その収縮の余韻に指を合わせるように緩急をつけて続ける。
甚「……まだ、だ。もっとだろ?」
「やっ……あ、も、やぁ……っ。」
快感に果てたはずの身体が、再び昂ぶり始める。
限界のはずなのに、もっと奥が欲しくなる。
甚「指だけでこんなになるなんて……まだ、ぜんぜん躾け甲斐あるな。」
言葉だけで、また1段と熱が上がった。
ミクはもう、逃げられないことを知っていた。
甚「……もう、指だけじゃ足んねぇだろ。」
ミクの息が止まる。
脚は力を失い、震えて立てない。
体は果てた余韻で熱を帯び、脳の奥にまで霞が掛かるような快感が残っていた。
そんな彼女の腰の下に、甚爾の大きな腕が差し込まれる。
「――えっ?」
ふいに浮いた感覚に、ミクが小さく叫ぶ。
次の瞬間、彼の腕の中で横抱きに持ち上げられていた。
お姫様抱っこ――。
場違いなほど優雅で、けれど彼がやるとどこまでも強引で抗えない。
「ちょ、まって……! やだ、降ろして、歩けるからっ……!」
甚「歩けない顔して言うな。ほら、足ぷるぷるしてんぞ?」
耳元で低く笑う声が落ちる。
吐息が頬をなぞるだけで、また呼吸が乱れる。
そのまま、ゆっくりと寝室の奥――
ベッドへ。
彼はベッドの端に立つと、まるで何かを“捧げる”ように、ミクの身体を丁寧に敷布の上に下ろした。