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第3章 知らない顔なんて出来ない
会社へ向かうために玄関のドアを開けた瞬間。
正面から、ゆるくタバコをくゆらせる男が現れた。
甚「あら、早ぇな。」
「あ……。」
伏黒甚爾だった。
スーツではないが黒いTシャツにジャケットを羽織り、どこか仕事へ向かう途中のような軽装。
少し目を細めて、女の顔を見つめてくる。
「……おはようございます。」
とっさに、よそよそしい挨拶をしてしまった。
いつも通りに、何もなかったかのように。
けれど――
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