第19章 裏に、ある意図
夜風が頬を撫でるはずなのに、火照った肌には何の冷却にもならなかった。
飲み会の帰り道──
ミクは五条悟と虎杖悠仁に挟まれるようにして、帰路につかされていた。
誰もが気遣いのつもりで並んで歩いているのだろう。
だが、ミクの内側ではまだ小さな異物が執拗に震え続けていた。
ピリ、とした感覚が腰の奥を揺らし思わず膝が震える。
悠「大丈夫? やっぱり酔い、きてる?」
悠仁が心配そうに覗き込んでくる。
だがその瞳には、あの時と同じ、どこか疑いと熱が混ざった色があった。
悟「んー……僕には気持ちよすぎて足が震えてるようにしか見えないけどな。」
悟がリモコンをポケットの中で操作しているのを、ミクは横目で見ていた。
振動が1段、強まる。
不意に脚の内側がきゅっと震え、甘い吐息が漏れそうになるのを喉奥で押し殺した。
「……やめて、悟先輩……。」
悟「えー、せっかく僕が送ってるんだよ? 途中でイっちゃったらそれもまた……ご褒美でしょ?」
羞恥と快楽の板挟み。
ふたりの視線が突き刺さり、頭がぼうっとしてくる。
そのときだった。
甚「──なにしてんだ、オマエら。」
低く、腹の底から響くような声が背後から掛かった。
振り返ると夜の路地の明かりの下に、伏黒甚爾が立っていた。
髪をかき上げ、眉間に皺を寄せた顔。
その眼差しは、ミクには向けられていない。
悠仁と悟、ふたりに真っすぐ刺さっていた。
甚「こんな夜中に、女の手ぇ握って送り届けるとか……上司とガキのくせに、随分と色気のあるご指導だな?」
悟「……甚爾。」
名前を呟いた瞬間、悟がリモコンの操作を止めた。
腰の奥の震えが止み、急に空虚な感覚が広がる。
その分だけ、思考がはっきりと戻ってきた。