第16章 触れられた記憶
絶頂の余韻に震えながら女の身体はふたりの熱で満たされたまま、小刻みに痙攣を繰り返した。
しばらくして、どちらもゆっくりと腰を引き抜けた瞬間、蜜と混ざり合った液が女の身体からとろりと零れ落ちた。
ベッドには熱と快楽の名残だけが満ちている。
悟「……壊れた?」
五条が冗談めかして女の額にキスを落とす。
甚「壊れるかよ……もっとイケる顔してんだろ。」
甚爾が笑い、シーツに倒れ込んだ女の腰を引き寄せた。
けだるい甘美な静寂がしばし続いたあと、またどちらかが手を伸ばし指が女の太腿をなぞった。
終わりはまだ訪れない。
欲望が完全に満たされることなど、この3人には――
きっと、ない。
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数日ぶりの出社。
熱は下がったものの、まだ本調子とは言えない。
それでも家にいても思考ばかりが巡ってしまい、気持ちを切り替える意味でも出勤することを選んだ。
エントランスからオフィスに入ると、すぐに視界に入ったのは悠仁だった。
彼はデスクに向かっていたが、こちらに気づくと勢いよく立ち上がった。
悠「──あっ! 来た!」
その明るくまっすぐな声に、思わず足が止まる。
彼女が近づくより早く悠仁は数歩で距離を詰め、すぐ目の前に立った。
悠「大丈夫? 本当にもう平気なの? 顔色……んー、少しだけ良くなった?」
彼の心配は嘘じゃない。
真剣な眼差しで、彼女の顔を覗き込んでくる。