第7章 6
烏野と青葉城西の練習試合が終わった翌日─
学校には、ある“他校”の姿があった
「うわっ!? 音駒だー!!」
「研磨!黒尾さん!!」
西谷と田中のテンションが上がる中、優香は静かに彼らの動きを観察していた
(音駒の連中…特にあの2人。普通のバレー選手じゃない。何か…“見えてる”)
そんな優香の視線に気づいたのか、研磨がふとこちらを向いた
目が合った瞬間─ゾクッとする感覚
「…君、視線、鋭いね」
「…あたしは“敵”と“味方”を見分ける訓練してたから」
「へぇ…人を“狙ってた”目だ。それって、バレーにはいらない能力だと思うけど」
「そうかもね。でも…今の時代、必要かもしれないよ」
研磨は何も言わず、スマホをいじりながらその場を去った
その後ろ姿に、優香は確信する
(あの人…事情を知ってる)
そんな中、黒尾がスッと近づいてきた
「“椚ヶ丘”出身地だろ?」
優香の瞳が揺れる
「…なんで知ってるの?」
「こっちにも、情報ってものがある。優香。俺たちはただの“バレーの仲間”じゃない。“監視者”でもある」
(…何それ、どういう意味?)
「日向翔陽。あいつに異常が出てきた。跳躍に、触手の片鱗が混じってる」
「…!」
「本人はまだ気づいてない。でも、このままだと“感染者”になる」
その言葉に、優香の体が強張った。
「なんでそんな大事なこと、あんたたちが─」
「烏間先生からの依頼だ。“もし優香が日向の異変に気づいたら、情報を共有しろ”って」
その名前に、心の奥がざわりと揺れる
(先生…)
「これ、もらっておく」
黒尾は、優香のポケットに小さなUSBを滑り込ませる。
「そこに、感染拡大の記録が入ってる。“烏野”だけじゃない。“全国”に広がってる」
─“戦い”はもう、始まっていた
夜、自室
優香は、USBのデータをパソコンで開く
そこには、全国の高校バレー部員に発症し始めた“触手化”の記録
異常な筋力増加、跳躍力、反応速度─
(まさか…全国の高校生を“兵器化”するつもり?)
その時、画面が一瞬乱れ、モニターに“あの顔”が映る
白衣の男─シロ
「ようこそ、戦場へ。花崎優香さん」
─優香の目が、静かに“殺意”で染まった
「…久々に、“殺る”か」