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跳躍と銃声の狭間で

第4章 3


「優香っ!!」
放課後のグラウンドに響いた元気な声。全力で手を振りながら走ってきたのは──西谷夕。
「あんた、またバレー部の体育館に来てたでしょ。ストーカーか」
「違うわ!たまたま来ただけだし、幼馴染が頑張ってる姿を見に来るのは当然でしょ!」
西谷は昔から変わらない。まっすぐで、うるさくて、でもどこまでも優しくて。
「それに……今のお前、ちゃんと笑ってるな」
「は?」
「稲荷崎のとき、めっちゃキツそうだったからさ。あの女……あれ何マネだっけ?」
「“白鳥レナ”ね。ぶりっ子で男に媚び売って、女マネ全員敵に回してたあの女」
優香の表情が一瞬だけ曇る。
─稲荷崎高校のバレー部にマネージャーとして仮入部していた頃。
ぶりっ子な先輩マネージャー・レナにターゲットにされ、陰湿な嫌がらせを受けていた。
水が入ったシューズ、消されたデータ、壊されたスマホ……。
「でも、全部録っておいた。LINEのトーク履歴も、監視カメラの映像も。最終的には、監督に直で提出して終了」
「マジでスッキリしたわあのとき。お前の“演技”も完璧だったしな。『私、そんなことするわけないじゃないですかぁ〜』って言ってた本人が映像にガッツリ残ってたとか」
「……ざまぁって言葉があれほど似合う人もいない」
西谷は爆笑したあと、ふっと真顔になる。
「でもさ、そのとき一人で全部抱えてたのお前だったろ。連絡くれよ。俺、何があってもお前の味方だろ?」
「……バカ。連絡したら、絶対暴走するじゃん」
「当たり前だろーが!!お前泣かされたら、相手が誰でもぶっ飛ばす!!」
その言葉に、優香の胸の奥が少しだけ熱くなった。
(……こんなふうに真正面から言ってくれるの、西谷だけだな)
「今度、またスパイク見せてよ。あんたの“空中三回転半殺法”」
「名前変わってんぞ!? でも……もちろん!何度でも見せてやるよ!」
──この日、優香の中で一つの確信が芽生えた。
「私は、どっちの世界も、絶対に守る」
バレーも。仲間も。
そして──暗殺教室で交わした、あの誓いも。
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