第3章 鬼に稀血
そして風柱になった実弥と。
その後藤屋敷を任された仁美。
実弥は今でも仁美の目が鬼化したのが自分のせいだと思っている。
あの時もし、違う柱が助けたのなら。
仁美は血鬼術が使える事なんて知らないまま、ただの人間として過ごせたはずだ。
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実弥は仁美の頬に触れていた手を離した。
赤い目が真っ直ぐに実弥を見ていた。
「………寝る。」
実弥はそう言うと、隣に敷いてある布団に横になると仁美に背を向けて横になった。
仁美はその背中を見ながら目を細めた。
どんな人と一緒に居ても、実弥ほど安心出来る事は無かった。
仁美にとって実弥は、他の人とは違う存在だった。
そんな事を実弥に伝えても、実弥は迷惑でしかないだろうから、仁美は実弥に何も言うつもりもない。
ただずっと本当は実弥の側に居たい。
仁美は実弥から目を逸らして窓の外の月を見た。
そしてその夜が明けるのを実弥の側で静かに待った。
それはとても穏やかな時間だった。
ー鬼に稀血 完ー