第1章 半々羽織
「私は物心付いた時から鬼と過ごしていました。」
「!!!」
想像をしていなかった言葉に義勇は仁美を凝視した。
「今の風柱様に助けられて、お館様にこの屋敷を任されるまで、鬼達は夜になると私の元に訪れていました。今でも夜に寝てしまうと鬼が来る様で太陽が昇っている時間にしか寝る事は出来ません。」
仁美の話を聞く度に、握られた拳に力が入った。
「…鬼は夜に来てお前に何をした…。」
義勇の言葉にはフッと笑った。
「悍ましくてとても義勇様には話せません。」
目を伏せて言った仁美の肩を義勇が掴んだ。
「!!!」
あまりにその力が強くて、仁美の目元が少し歪んだ。
「鬼どもはお前の体に触れたか?」
義勇は自分で聞きながら、その答えは間違っていると言って欲しかった。
しかし無情にも仁美は義勇の言葉を肯定した。
「……ええ…。」
そう小さな声で呟いた仁美を義勇は抱き締めた。
義勇の胸の中に押し込められて、彼からも同じ様に藤の花の香りがした。