第3章 鬼に稀血
仁美から漂う甘い香りに、真っ赤に染まった目に見つめられて。
実弥の体の中に仁美の血が混じっていった。
仁美の血が実弥の全身に広がった時に体が熱くなった。
まるで生き物の様に仁美の血は体の中を流れていった。
抉られた脇腹の痛みが引いていくのを感じた。
どんどん血が体中を巡って、まるで実弥の体を這っている様だった。
みるみる内に脇腹の傷が治っていって、実弥の頬は血が通った色が戻ってきた。
拳を握ると力が入るのを感じて、実弥は仁美を突き飛ばした。
仁美はそのまま倒れた。
「テメェ!!何した!!」
「…………………。」
実弥に怒鳴られて仁美は考えた。
何をしたって?
ただ実弥を助けたかった。
そう心から願ったら、体の奥底から血が湧き立つ感覚を覚えた。
私はこの人を救える。
なんの根拠も確信も無いのに仁美はそう強く感じた。
それをどう伝えればいいか分からなくて、仁美はただ、睨んくる実弥を見上げていた。