第3章 鬼に稀血
「私を助けた事を後悔していますか?」
「は?それはお前だろ。俺じゃ無かったらお前は……。」
そこまで言うと実弥は言葉を詰まらせた。
鬼の目を持つ事も無かったのに……。
言葉が出ない代わりに、実弥は拳をぎゅっと握った。
「…実弥様……実は私は自分の顔を見た事がありませんでした。」
「………は?」
「私の住む家に鏡が無かったんです。」
昼間は真っ暗に、夜しか起きて無かったのだ。
髪は母親が結ってくれた。
鏡なんて見た事も無かった。
「だから私は、自分の姿を見たのはお館様のお屋敷が初めてでした。」
仁美は初めて自分の姿を見た時から、この目は赤かった。
あの鬼と同じ色で真紅の瞳。
「どうでした?」
「私の目は何色でしたか?」
仁美の言葉に実弥は息を呑んだ。
胸が熱くなり締め付けられた。
ーーーー忘れるはずが無かった。
「私の目の色を知っている人は実弥様しかいません。目が赤くなったからと言ってそれがどうしたと言うのですか?」