第3章 鬼に稀血
「……こっち見てんじゃねぇよ。」
「………………。」
実弥に睨まれて、スーッと仁美は目線を逸らした。
横になっているだけで、眠たくも無いから、仁美は天井のシミを数える事にした。
目だけ動かしてシミを数えていく。
体を動かしたら、また実弥に怒られそうだから。
そんな仁美を見て実弥は目を細めた。
大きな目がキョロキョロ動いていて、楽しくもないだろうに、言われた事に素直に従う。
こんなに雑に扱われても何も気にしないで、側から離れない。
「……なんで何も言わねぇんだ?」
仁美を見ながら実弥は呟く様に彼女に尋ねた。
仁美の目が再び実弥を捉えると、赤い目としばらく目を合わせた。
「………実弥様……。」
仁美は起き上がる事なく顔を少し実弥に向けた。
仁美の目に映っている自分の姿がどんなモノか簡単に想像出来た。
情けなく顔を顰めさせて、きっと仁美から欲しい答えを縋っているのだろう。
それがどんなに情けなくても、実弥は仁美に聞きたかった。