第3章 鬼に稀血
部屋に戻ると仁美は、やっと濡れている髪を乾かした。
タオルで何度も長い髪の毛を叩いて、水気が飛ぶまで繰り返す。
パンッ。
仁美が髪の毛を叩く度に、藤の花の香りが部屋に漂った。
その匂いと仁美を見ながら、実弥はゆっくり目を閉じた。
「ーーーーー実弥様。」
仁美に肩を揺さぶられて、実弥はハッと目を開けた。
「寝るならお布団でどうぞ。」
「………………。」
少し目を瞑っただけのつもりだった。
しかし実際は寝てしまったみたいで、目の前には寝床も整っていた。
「……眠たくねぇし…。」
「……休んで下さいよ…。」
仁美が起きてる横で寝息を立てるなんて、死んでも嫌だった。
「……お前が横になってみろ…。」
「………………。」
仁美は眠たくも無いが、実弥に言われたので素直に布団に横になった。
体を真っ直ぐ伸ばし、手は胸の上に置いた。
しかし、目はしっかりと開いていて、そな赤い目がチラッと実弥を見た。
「………………。」
実弥は膝に手を置き、肘を突いて仁美を見下ろした。