第3章 鬼に稀血
気にする事なんて無いのに…。
貴方はあの日私を地獄から救ってくれたのだから。
仁美は実弥にこの気持ちを伝えたいとは思っていたが、実弥が仁美とは距離を取りたがっている様なので、自分から彼に話しかける事は無かった。
「……お館様の屋敷にはどうやって来たんだ?」
ポツリと実弥の声が聞こえて、仁美は顔を上げた。
実弥は仁美を見ないで声をかけた様だ。
(…話掛けてくるなんて珍しい…。)
「呪印の書いたお札をおでこに貼って歩いて行きました。」
仁美はお札をおでこに貼って、実弥に見せた。
「………………。」
実弥は姿が見えなくなった仁美に訝しげな顔を見せた。
それなら1人で蝶屋敷に行けるのでは?
そう聞こえる様な顔だった。
「……そーかよ…。」
しかし、実弥はそれ以上何も言わないで、また前を向いて歩き出した。
(……お館様の申し付けだから断れないのだろうな。)
そんな実弥の態度に、仁美はそう納得付けた。