第3章 鬼に稀血
「……違う人物だと思います……。」
「……そうか…。でも亡くなった時期的に、鬼舞辻がその男の体を使っていたのは間違い無いだろう。」
あの夜に。
仁美の髪に触れ、唇に触れたのはこの男では無い。
体を割くような痛みと、心臓を潰された様な胸の痛みを与えたのも違う男だ。
仁美は強く写真を握り潰すと、空気を求める様に大きく息を吸った。
今日はもう話をやめた方がいい様だ。
そんな仁美を見て、耀哉はそう結論を出した。
本当は無惨がどんな姿をしていたのか問い詰めたいが、仁美は鬼殺隊では無い。
耀哉にとって仁美は、守るべき一般の人間だ。
「仁美。実弥に使った力は使っていないね。」
「……はい……。」
「いつもの様に蝶屋敷に行ってから、藤屋敷に戻りなさい。」
仁美は定期的にしのぶに検診を受けている。
仁美の精神的なケアもそうだが、彼女が鬼化していないかを確認している理由もある。
仁美が鬼化すると言うのは、耀哉の憶測でしか無い。
実際仁美は無惨から血を与えられた訳では無いからだ。