第3章 鬼に稀血
毎回違う容姿だった。
それこそ男性だったり、女性だったり…。
しかし仁美をジッと見下ろすその目だけは、いつも同じ赤い目だった。
仁美はそれをそのまま耀哉に伝えた。
「うん…やはり鬼舞辻無惨は姿を変える事が出来る様だね。」
耀哉は仁美を長年視察していたのは同一人物で、鬼舞辻無惨だと思っている様だ。
耀哉が何か考える様な仕草をしている時、仁美は落ち着かず少し汗ばんだ。
赤い目を思い出す時はいつも鼓動が早くなる。
まだ無害だった頃の話でも。
そんな仁美の様子を見て、耀哉はあまり長く話す事は出来ないと悟った。
一枚の写真を出して、仁美に差し出した。
白黒の写真には柔らかい笑みを浮かべた青年が写っていた。
「彼が仁美と婚姻関係にあった男性だ…。仁美を保護した後に亡くなっているが…。」
仁美は耀哉の話を聞いて、その写真の人物があの祝言の夜の男性だった事を初めて知った。
真っ暗な中、赤い目だけしか見えなかったが、暗闇に浮かんだ背丈や輪郭は別人に思えたからだ。
その写真からはあの夜の面影は1つも無かった。