第1章 半々羽織
寝床が出来上がる頃になっても、義勇は部屋の中で立ったままだった。
座る事も忘れて、寝床を用意している仁美をジッと見ていた。
「……柱様…。」
用意が終わった頃に仁美は義勇に声を掛けた。
「……感謝する。」
義勇の言葉を聞いて、仁美は腰を上げた。
部屋から出ていこうとしている仁美を義勇は呼び止めた。
「この屋敷には他に人が居ないのか?」
急な義勇の質問に仁美はポカンとした。
「まさか…数人の使用人が居ますがこんな夜更けなので休ませてます。」
「でわ、この屋敷の主は?」
義勇がチラッと部屋の外を見た。
どうやら彼はこの屋敷の主に礼儀を通したい様だ。
義勇の質問の意図が分かると、仁美は彼に向き直った。
「私です。」
仁美は自分の胸に手を当てて義勇を見て言った。
「私がこの屋敷の主の仁美です。姓はありません。」
義勇は仁美の言葉に驚いた。
この大きな屋敷を切り盛りしているのが、まさか自分と歳も違わない女性だったからだ。