第2章 輝石の額当て
仁美は正真正銘人間だった。
例え彼女が『鬼から産まれた子供』でも。
人間を鬼化出来るのは鬼舞辻無惨の血だけだからだ。
「……………………。」
仁美はそれだけ考えると止めていた手を動かした。
「っ!いたっ!」
手元が狂ってしまい、針が仁美の指に深く刺さった。
ドクッドクッドクッ。
針が刺さったまま、仁美は自分の指を凝視した。
針の痛みは小さいのに、仁美の心臓が尋常な無いほど高鳴った。
短い呼吸を何度もし、仁美の手は震え出した。
仁美は自分の血を見るのが怖かった。
震えた指が針から抜けた時に、真っ赤な鮮血が一雫流れた。
それはずっと見てきたあの赤い目と同じ色をしていた。
「はっ…!!はぁっ!!」
急に喉が塞がった様な息苦しさを覚えた。
手足が急に冷たくなり、痙攣の様に激しく震え出した。
自分に発作が起きているのだと分かった仁美は棚にある薬瓶に手を伸ばした。
しかし激しく揺れている手で薬瓶を掴むことが出来ずに、仁美の手に薬瓶が当たってしまった。