第2章 輝石の額当て
天元1人だったら、藤屋敷を利用しなくても寝ずに家に帰る事は出来る。
だけど彼は奥方が居る時にはなるべく彼女達の負担の無い様に配慮していた。
その為だけの滞在意義だった。
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夜も老け切った頃。仁美は針仕事をしていた。
少ない灯りを部屋に灯して、仁美は昼間出来ない作業を夜にこなしている。
昼夜逆転の生活は不便だが、仁美にとってはそれが当たり前だった。
人間の目で暗闇は不便だが、こうして灯りを灯せば解決出来る事だった。
『良かった。人間だ。』
須磨が言った言葉に、仁美は針を止めた。
……人間…。
仁美は自分が人間だと分かっていても常に疑問だった。
本当に自分は正真正銘人間なのだろうか。
『実弥に使った力を2度と使ってはいけないよ。仁美。』
仁美の頭の中で耀哉の言葉が響いた。
『私の推測が正しければ、力を使えば使うほど仁美の体は鬼へと近くなる。』
玄弥と出会ったあの日。
仁美は鬼の特徴の目になった。