第2章 輝石の額当て
「3人とも奥方様でしたか。」
食事の配膳を終えた後も、仁美は彼らの部屋に留まり一方的に話をする須磨の言葉に相槌を打っていた。
普段なら隊員の私生活の事など聞かないが、須磨を始めとして陽気に会話を楽しむ奥方達に仁美は部屋を出るタイミングを失っていた。
しかし、それは苦痛な時間などでは無くて、天元を中心に笑い合っているその家族の姿は仁美の心を温かくした。
「ごゆっくりして下さい。」
一通り話を聞くと、仁美は彼らの部屋を後にする。
部屋を出る仁美を天元はチラッと見た。
(……アレが鬼と暮らしていた女か…。)
少し前に不死川が助けたと言う、鬼の世界で生きていた稀な人間。
鬼の特徴的な目を持ち、人間の仁美。
一目見て分かった。
アレはただの人間だ。
どうして仁美が鬼の世界で生き延びたのか天元には分からなかった。
一瞬そんな疑問に悩んだが、それはすぐに頭から離れた。
何せ側には明るい嫁達が今も騒がしく会話を楽しんでいる。