第2章 輝石の額当て
「…失礼しました…。」
須磨の代わりに謝ってくれたのは雛鶴だった。
別にたいした事では無いので仁美は笑って頷いた。
須磨の後に続く様に天元と雛鶴達も門に近付いた。
自分より遥かに大きな天元の影に仁美は顔を上げた。
赤い目が仁美を見下ろしていたが、その色は仁美の様に鬼特有の危うさは無かった。
仁美はしばらく天元と目が合ったままポツリと言った。
「……月が綺麗ですね。」
仁美にそう言われて、天元は一瞬キョトンとした顔をした。
「ああ…。」
そして欠けている月を見上げて仁美に言った。
「あんな月より俺の方がド派手だ。」
ニヤッと笑って言った天元に、仁美の口角が少し上がった気がした。
「ご案内します。」
仁美がそう言った時には、もう須磨は屋敷の中に入っていた。
そんな須磨をまきをが叱りつけるのを見ながら、仁美は彼らを屋敷の中に案内した。
彼女達がみんな天元の嫁だと言う事を知ったのはこのすぐ後だった。